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減塩調味料って本当に必要?知っておきたい使い方と注意点

塩分の摂取量を意識することは、健康を維持する上で重要なポイントです。特に日本では、しょうゆや味噌など塩分を多く含む調味料を日常的に使う習慣があり、これが過剰な塩分摂取につながることがあります(注1,2)。

そこで注目されているのが、塩分50%カットや食塩無添加といった減塩タイプの商品です。近年、しょうゆや味噌などの定番調味料にも減塩タイプが販売されており、選択肢が広がっています。

今回は、減塩調味料の必要性や使用方法について、医師監修のもとで詳しくご紹介します。

目次

1. 減塩の必要性って?


塩分を摂りすぎることでよく知られているリスクが「高血圧」です。血液中にナトリウム濃度が増加すると、身体はそのバランスを保つために水分を取り込みます。これにより血液量が増え、心臓がより高い圧力で血液を循環させる必要が生じ、血圧が上昇します。この状態が長期間続くと、血管に大きな負担がかかり、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高まります(注3,4)。


厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたりの塩分摂取目標量を男性で7.5g未満、女性で6.5g未満としています(注5)。しかし、「国民健康・栄養調査(令和4年)」によると、日本人成人の平均摂取量はこの目標を大きく上回り、男性で10.5g、女性で9.0gと報告されています(注6)。

2. 減塩調味料って、どんなもの?


減塩調味料とは、通常の調味料より塩分が少ない調味料のことです。これらの商品は、食品表示法の栄養表示基準に従って「減塩」と表示されるため、一定の基準を満たした商品に限られます(注7)。


<減塩食品の表示の種類>

①含まない旨の表示②低い旨の表示③低減された旨の表示
表示例・無塩
・塩分ゼロ
・ノンナトリウムなど
・低塩
・塩分控えめ
・塩分ライトなど
・塩分1/2
・食塩分30%カットなど
条件食品100gあたりのナトリウム量は5㎎未満のもの食品100gあたりのナトリウム量は120㎎以下のもの対照となる製品からのナトリウム低減量が100g あたり120㎎以上のもの※

【参考】消費者庁「栄養成分表示及び栄養強調表示とは」p8
※しょうゆの場合、ナトリウム低減が20%以上であることも必要です。


● 「うす塩味」は減塩商品なの?
商品パッケージに「うす塩味」や「塩味控えめ」と書かれているのを目にすることがあるかもしれません。これらの表示は、あくまで味覚に基づく表現であり、実際に含まれている塩分量が少ないとは限りません。塩分含有量が高い場合もあるため、注意が必要です。


一方、「あま塩」や「うす塩」、「あさ塩」は、栄養表示基準の適用対象であり、塩分が従来品より少ないことが保証されています(注8)。


● 「食塩無添加」は、ほんとに食塩が含まれていない?
「塩分無添加」「食塩不使用」とは食品加工時に食塩を加えていないということを意味しますが、素材そのものには食塩やナトリウムが含まれている場合があります。食品100gあたりのナトリウム含有量が120mg以下の場合、「食塩無添加」と表示することができるため、必ずしも塩分ゼロではないことに、注意が必要です(注7)。


● 減塩率についても知っておこう!
減塩率は、従来の製品と比較してどれだけ塩分を減らしたかを示すものです。例えば、通常のしょうゆが100mlあたり10gの塩分を含んでいる場合、減塩しょうゆが5gであれば、減塩率は50%となります。パッケージに記載された栄養成分をもとに、自分に合った商品を選ぶことが大切です(注7)。




3. 減塩調味料にはどんな種類があるの?


実際に、市場に出回っている代表的な減塩調味料には以下のようなものがあります。


● しょうゆ:減塩しょうゆは、醤油の濃厚な味やだしの風味を残しつつ、塩分を抑えた商品が提供されています。商品数も豊富で、瓶やペットボトル、紙パック、密封ボトルなど、容器の種類も多彩です。


● 味噌:減塩味噌は、大豆やお米、塩などの原材料にこだわり、旨味を引き出す工夫がされています。塩分を控えても、風味やコクがしっかりと感じられるため、物足りなさを感じさせない商品も多くあります。


● だし・スープ:減塩タイプのだしやスープは、昆布やかつお節などの天然の旨味成分を活かして、塩分を抑えても満足感のある味わいを実現しています。和風料理やスープのベースとして幅広く活用できます。


● ソース:ウスターソースや焼きそばソースの減塩版も多く、スパイスや果実の風味で、減塩でもしっかりとした味わいを維持しています。揚げ物や料理の仕上げにおすすめです。


● ドレッシング:減塩ドレッシングは、塩分を控えつつも、ハーブやスパイス、酸味をうまく組み合わせて、さっぱりとした味わいを楽しめます。サラダやマリネに最適です。

4. 減塩調味料は必要?


減塩調味料はあくまで塩分を控えるための選択肢の一つです。必ずしもこれらの商品に頼る必要はなく、他の方法で塩分を減らすことも可能です(注3)。


<塩分を控えるための方法>

● 香ばしさを加える
焼いたり炒めたりすることで香ばしさが増し、塩分を減らしても風味を楽しめます。


● 油脂でコクを出す
油やバターを使い、コクを加えることで薄味でも物足りなさが軽減されます。


● スープは残す
スープなどの塩分が高い料理は、すべてを飲み干すのではなく、少量にすることで塩分摂取を減らせます。


減塩の具体的な方法については、以下の記事も参考にしてみましょう。


参考)減塩習慣を始めよう!塩分を控える理由と減塩のコツ
https://www.kenko-webshop.jp/blog/salt-reduction_20240401

5. 減塩調味料を使うときの注意点


減塩調味料を使う際には、いくつかの注意点を押さえておきましょう(注5,9,10)。


● 使いすぎに注意
減塩調味料を使用すると、一般的に薄味になるため、無意識に量を増やしてしまいがちです。塩分は含まれているため、計量スプーンや計量カップを使って、使い過ぎないようにしましょう。


● 過度な減塩は避ける
日常の食生活でナトリウム不足になる心配はほとんどありません。しかし、過度に減塩しすぎると、疲労感や体調不良を引き起こす可能性があります。特に、暑い季節や激しい運動をする際には、適度なナトリウム摂取が必要です。


● 糖分や添加物の摂り過ぎにも注意
減塩食品では、塩分を抑える代わりに糖分や添加物が増えている場合があります。例えば、減塩梅干しなどでは、風味を補うために糖分や調味料が多めに使用されることがあります。パッケージに記載されている成分表で、糖分や添加物が過剰になっていないか確認するようにしましょう。


● 賞味期限が短くなることも
ナトリウムには保存性を高める効果があるため、減塩食品は一般的に保存期間が短くなる傾向があります。減塩タイプのしょうゆや味噌などは、開封後は冷蔵保存し、できるだけ早めに使い切るようにしましょう。また、購入時には賞味期限を確認し、使い切れる量を選ぶことが大切です。


<特に腎臓病の方は注意!減塩食品の成分は購入前に必ず確認を>
減塩食品の中には、塩味を保つため、一般的な食塩(塩化ナトリウム)の代わりに塩化カリウムが使用されていることがあります。塩化カリウムには特有の苦みがあるため、マスキングする素材が併用されてことも多いようです。


カリウム制限が必要な腎臓病の方や食事療法を行っている方は、事前に医師に相談して使用することをおすすめします(注11)。

6. 減塩調味料で味が物足りないときの工夫


減塩調味料を使っても味が物足りないと感じる場合、以下の工夫を試してみましょう。


● さまざまな製品を試す
現在は多種多様な減塩調味料が市販されています。いろいろな商品を試して、自分の好みに合ったものを見つけることが大切です。


● 他の減塩方法と組み合わせる
減塩調味料だけに頼るのではなく、香ばしさを出す調理法やコクを加える食材を組み合わせることで、満足感を高めることができます。

7. まとめ

減塩調味料は、塩分を控えながらもおいしさを保つための一つの選択肢ですが、料理の風味を活かす調理法や材料選びを工夫することで、無理なく塩分を減らすことが可能です。特に腎臓病などで食事制限が必要な方は、医師の指導のもとで安全に減塩を進めましょう。食生活の見直しが健康維持につながる第一歩です。

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参考文献

注1)調味料の上手な使い方| e-ヘルスネット(厚生労働省)
注2)ナトリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
注3)高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
注4)動脈硬化 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
注5)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)
注6)厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和4年)」
注7)消費者庁「栄養成分表示及び栄養強調表示とは」
注8)消費者庁「食品表示基準について (総則関係)」
注9)文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
注10)農林水産省「和食文化の継承と健康づくり-減塩食の取り組み-」
注11)平田清文,「塩化カリウムと減塩 調味料」,調理科学Vo1,16No.3(1983)
(参照2024/11/20)

この記事を書いた人

横川仁美
管理栄養士
管理栄養士の資格を取得後、保健指導や重症化予防を中心に2500人以上へのアドバイス提供。 現在は食専門ライター×料理研究家として執筆・監修、 また企業のブランドイメージに沿ったレシピ提案を行っている。

監修者紹介

木村眞樹子医師
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。 妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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