減塩習慣を始めよう!塩分を控える理由と減塩のコツ
そもそも塩分ってどんなもの?
「塩分」とは、食品中に含まれている食塩相当量のこと。「食塩」は塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする調味料のことを言います。食塩の主成分である「塩化ナトリウム」に含まれるナトリウムは、ヒトが健康に生きる上で不可欠なミネラルの一つです。ナトリウムは、カリウムとともに細胞の浸透圧を正常に保ったり、血圧の調整に関わったりしています(注1)。
日本人の塩分摂取量が多い現状
厚生労働省によれば、日本人の成人が健康的とされる「食塩摂取量」の目標は、男性が1日あたり7.5g未満、女性が1日あたり6.5g未満です(注2)。さらに、日本高血圧学会や世界保健機関(WHO)は、より厳しい摂取目標を掲げています(注3,4)。
・日本高血圧学会:食塩摂取量1日6g未満
・世界保健機関(WHO):1日5g以下
しかし、実際の摂取量の平均は男性が10.9g、女性が9.3gとなっており、目標よりも1日に約3~4gも多く摂取しているのが現状です(注5)。
塩分の取り過ぎに伴うリスク
塩分の取り過ぎが健康に及ぼすリスクは何でしょうか。濃い味や塩辛い食べ物を好んで摂取しすぎると、身体の水分バランスや浸透圧が乱れ、以下のような症状が出やすくなります。これにより、身体には余分な負担がかかり、病気の原因にもなり得ます(注6,7,8)。
・のどの渇き
塩分の多い食事を摂取すると、血液中のナトリウム濃度が上昇し、身体は一定の濃度を維持しようとして水分が欲しくなります。
・むくみ
体内の塩分濃度を一定に保とうとする身体の働きにより、身体が水分を溜め込む原因となります。
・肥満
塩分の過剰摂取によって体内に水分が溜め込まれ、体重増加につながることがあります。
・高血圧
食塩を摂り過ぎると、体内の塩分濃度を水分で調節して一定に保とうとします。身体の血液量が増え、血圧が上がってしまいます。
・認知症
中年期(40~64歳)に高血圧である場合、高齢期に認知症(アルツハイマー型認知症・血管性認知症)になりやすいことがわかっています。
塩分を取り過ぎる原因
厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査」では、食品群別の食塩摂取量を調査したところ、約70%が調味料という結果でした。調味料の中でも、しょうゆ、塩、みそからの摂取が多く、調味料以外の食品では、パン、麺類、干物、かまぼこ、漬物などの食品から摂っていました(注5)。
参照:厚生労働省 「令和元年国民健康・栄養調査報告: 第1部 栄養素等摂取状況調査の結果」
塩分を上手に抑える5つのテクニック
塩分の摂取量を減らすためには、だしや酸味を上手に活用して、食材のおいしさを引き立てる工夫がおすすめです。さらに、カリウムが豊富な野菜や果物を意識的に取り入れるのも良いでしょう(注9)。
①旬の食材を使う
旬の食材は、素材の自然な味わいが際立ち、控えめな味付けでも料理をおいしく味わうことができます。
②だしを利用する
昆布やかつお節、煮干し、干ししいたけなどからとっただしには、うま味物質が豊富。素材の風味を引き立て、塩分を控えつつも料理がおいしく仕上がります。ただし、化学調味料やだしの素には多くの塩分が含まれているので、使用する際は量を調整しましょう。
③酸味をプラスする
酢やレモン、ゆず、すだち、かぼすなどの柑橘類の搾り汁を活用することで、薄味でも物足りなさを感じさせません。
④味にアクセントをつける
全ての料理を控えめな味付けにすると、食事が単調に感じられることがあります。一品だけはしっかりとした味わいに仕上げ、食卓にアクセントを加えることで、食欲減退を防ぎましょう。
⑤調味料は最後につける
味付けは最後の段階で行うのも一つの方法です。最初から味付けを行うと、中心部まで味が均一に染み込んでしまい、塩分の過剰摂取を招く恐れがあります。最後に調味料を加えることで、塩味をより感じやすくしましょう。
<塩分調節に役立つ「カリウム」の重要性>
カリウムは、人間の身体に不可欠なミネラルであり、ナトリウムの体外排出を促進し、塩分の過剰摂取を調節する役割があります。カリウムの摂取を意識して行いましょう(注10)。ただし、腎臓機能が弱い場合は摂取を控えた方が良い場合もあるため、不安や疑問がある場合は、医師や管理栄養士に相談しましょう(注2)。
カリウムは、次のような野菜や果物に多く含まれています(注11)。
・多く含まれている食品:納豆、ほうれん草、わかめ、アボカド、バナナなど
・摂取のポイント:カリウムは水溶性であるため、スープやホイル焼きなどの汁ごと食べられる料理が適しています。果物は生のままで摂取できるので、良いカリウムの源となります。
外食時の減塩のポイントは?
外食時も工夫次第で塩分の摂取を減らすことができます。塩分の少ないメニューを選んだり、食べ方を工夫してみましょう。
①スープやつゆは、残す
外食のスープは残すことがおすすめです。特に、麺類のスープは多くの塩分を含みます。無意識に飲み干すと1日の塩分摂取量を超えることもありますので、注意が必要です。
②ソースやタレ、ドレッシングは控えめに
ソースやタレなどの調味料は、注文時に少なめにしてもらったり、別添えにして自分で量を調節すると効果的です。
③定食を選ぶ
単品の丼物やパスタは、ご飯や麺に汁の塩分がしみ込んでしまい、塩分の調節が難しくなります。できるだけ単品は控え、塩分の調節がしやすい定食を選びましょう。
④食べ過ぎない
低塩分の料理でも、大盛りを選ぶとソースやタレの塩分も増えます。普通盛りを選び、腹八分目を目指しましょう。足りない場合は、野菜や果物をセットにして栄養バランスを考えるとよいでしょう。
⑤栄養成分表示があれば、メニューの塩分を確認する
最近では多くの飲食店が栄養成分を掲載しています。特にチェーン店ではホームページやメニューに成分が載っていることがあります。外食時にはこの情報を参考にし、塩分の控えめなメニューを選択しましょう。
<外食メニューの塩分量も知っておこう!>
メニュー(1人前) | 塩分量 |
きつねうどん | 5.3g |
にぎり寿司(醤油込み) | 5.0g |
天どん | 4.1g |
カレーライス | 3.3g |
【出典】(厚生労働省)「スマート・ライフ・プロジェクトHP」(注12)
減塩食品を上手に使うのも
日本人は調味料からの塩分摂取が多いため、調味料の使い方を見直すことが減塩への一歩です。調味料の量を減らすのが難しい場合は、既存の調味料を減塩調味料に切り替えることもおすすめです。外食時でも減塩のしょうゆなどを持ち歩くのもよいでしょう。
<さまざまな減塩調味料・食品>
減塩調味料 | 減塩商品がある食品 |
しょうゆ・めんつゆ・中華だし・和風だし・ドレッシング、ソース・塩など | 梅干し・漬物・佃煮・即席みそ汁・ハム・ベーコン・かに風味かまぼこ・即席めん・ふりかけ、佃煮・せんべい など |
【参考】日本高血圧学会「さあ、減塩!~減塩・栄養委員会から一般のみなさまへ~」(注13)
まとめ
健康のためには塩分を控えることが大切ですが、塩分を厳しく制限することで人生の楽しみが奪われてしまうこともあります。だしや酸味を活用したり、料理の中で一品だけはしっかり味付けしたり、工夫を取り入れて、減塩を心がけましょう。